保険診療と自費診療の違い

保険診療と自費診療はどちらを選べば良い?

歯科治療を受ける際、保険診療と自費診療のどちらにすべきか判断に迷うことがあるのではないでしょうか。

 

保険診療は日本独特の保険制度で、国民であれば誰でも同じ条件で治療が受けられます。治療費の公費負担があるので、患者さまが支払う治療費は少なく済むものの、制度の枠を超えた質の高い治療は受けられません。一方、自費診療では高度な治療が受けられますが、全額自己負担になるため治療費負担がかさむことになります。このように、保険診療と自費診療はそれぞれ一長一短があるのです。

自費診療が高い理由

治療費だけを見ると、確かに自費診療は保険診療に比べて高額になりますが、高額になるのはそれなりの理由があります。

保険診療

使用する材料や治療方法があらかじめ決められていて、一定の水準を越えた治療は受けられません。当然、インプラント治療や審美歯科のような精密で審美性の高い治療は対象外です。

 

自費診療

治療費や治療内容に制限はありません。良質な素材や材料が豊富で、患者さま一人ひとりのニーズに合わせて最適な治療法を選ぶことができます。もちろん、インプラント治療やマイクロスコープを使用した根管治療、審美歯科(セラミックなどによる治療)なども受けていただくことができます。

自費診療は費用面だけで考えると高く感じますが、歯や歯ぐきへの適合が良く耐久性があり、審美的にも良好で、長い目で考えると口腔内全体の健康を維持できる再治療の少ない治療と言えます。

被せ物における保険診療と自費診療の違い

保険診療と自費診療の差が大きくなるのは「補綴物(ほてつぶつ)」の違いのためです。保険診療も自費診療も、歯型を採って被せ物を作製し、それを接着するまでの一連の流れは変わりません。実質的な違いは、自費診療が歯型を採る際の材料や被せ物自体の素材、接着剤などに良質な材料を使用できるところにあります。
それぞれの違いや特徴をご説明いたします。

印象材料(型取り材料)の違い

保険診療の印象材

アルジネート印象材・寒天印象材を使用します。温めて溶かした材料に水を加えて練り、型に流し入れて歯に圧接して歯型を採ります。歯型を採取した後、水分が抜けて乾燥すると、歪みが生じて被せ物の精度が悪くなり、接着した際に隙間ができやすくなります。汚れもたまりやすくなるため、そこからむし歯になったり、外れてしまったりすることもあります。

自費診療の印象材

ゴム製のシリコーン印象材を使用します。シリコーン印象材は、時間が経っても乾燥しないので変形や歪みがほとんどありません。そのため、被せ物の完成度が高くなり、適合性の良い状態に仕上がります。被せ物と歯肉の間に汚れがたまりにくくなるので、外れたりむし歯が再発したりする可能性はきわめて低くなります。

補綴物の材料の違い

保険診療で使用する材料

歯科用プラスチック(レジン)や銀合金、金銀パラジウム合金など、被せる部位によって使い分けます。プラスチックは壊れやすく、しかも色の調整ができないので審美性に欠けます。プラスチックで入れ歯を作製した場合、上顎に密着する床部分が厚くなり、安定性に欠けてズレなどの違和感が生じます。金銀パラジウム合金は銀を多く含むので、金属アレルギーを引き起こす場合もあります。

自費診療で使用する材料

セラミックスや、セラミックス(陶材)に近い硬質レジン、特殊な金属(ゴールド・チタン・コバルトクロムなど)など、治療法や装着する部位によって材質を使い分けます。自費診療で使われる素材の特徴は、生体親和性があり健康被害がほとんどないことです。耐久性や強度に優れているので壊れにくく、審美性にも優れているので美しく仕上がります。入れ歯に使用する金属のチタンやコバルトクロムには耐久性があり、しかも保険診療に比べて薄く仕上がるため、軽くて違和感が少なく、食べ物の熱さや冷たさが伝わる入れ歯になります。